自転車のこと(その1)

もともと自転車に興味を持ったのは高校1年の時だったと記憶している。当時から欲しいものがあると、自分なりにとことん調べるタイプであったが、当時は勿論インターネットなど無くひたすら雑誌を読みあさり、学校の帰りには買いもしないのに自転車屋を見て回る毎日だった。少しは小遣いを貯めてはいたが、下手に知識を付けてしまったものだから中途半端なものは買う気になれず、予定金額に達するのはまだまだ先だと思っていた。
しかし!天は見ていたのである。なぜか夏休みの前に祖父から臨時収入が入ったのである。これで欲しかった自転車が買えるではないか。いつもは何かと厳しい親父も自転車を買うことを許してくれたので晴れて本格的な自転車を買うことができた。(実はあとで判ったことだが、どうやら見かねた親父が祖父に頼んで祖父からの小遣いという形でお金を出してくれたらしい。憎いぜ親父!)
このときに買ったのがTOEIのランドナーだ。ランドナーというのは旅行用の自転車のことで、太めのタイヤに泥よけやライト、鞄をのせるためのキャリアが付いていてガッシリとしたイメージの自転車である。特にTOEI社のランドナーは更に輪行(バラして電車などで自転車を運ぶこと)をしやすいためにハンドルバーがワンタッチレバーで簡単に外れるようになっていた。色は茶色だったが、なぜ茶色を選んだのかは憶えていない。(組み上がるのが早いとかそんな理由だったと思う)
買ったお店は京都のスポーツサイクルヤマネ。メガネをかけた無口な親父が組み上げてくれた。お店に寄っては何も買わないでただただパーツを眺めては帰る俺に文句一つ言わなかった。今から思えばそんな職人気質の親父が周りに沢山いたなと思う。